【インタビュー】アカデミアの創薬シーズを社会実装 持続的にその橋渡しを行うことが私たちの社会的使命

日本は米国、スイスに次いで世界第3位の開発品目数を誇る新薬創出国だが、アカデミアには多くの創薬シーズがあるにも関わらず、製薬企業が収益を見込めなければ治験に踏み出そうとしない状況がある。この2者間にある落差は「製薬の死の谷」と呼ばれ、創薬業界における大きな課題だ。昨今、注目を集めるバイオベンチャーはアカデミアと製薬企業の間の橋渡しになると考える向きもある。株式会社ファーマフーズは、機能性素材事業、通信販売事業、そして創薬事業の3つを柱として展開し、現在は第二創業期を掲げてさらなる躍進を目指すバイオベンチャーである。2021年に東証1部上場を果たした盤石の企業として、どんな橋渡しを考えているのだろうか。バイオメディカル部部長の東山 寛尚 氏にお話を伺った。

東山 寛尚 氏

── ファーマフーズ様は、さまざまな事業を展開しておられますが、その中で創薬事業はどのような位置づけなのでしょうか。

ファーマフーズでは、ファーマギャバ®など機能性表示食品制度に則った機能性素材を開発し食品メーカー等に販売するB to B事業、機能性素材を使った独自の製品を通信販売するB to C事業、そしてニワトリ由来抗体作製技術「ALAgene® technology」により医薬品開発を行う創薬事業の3つを柱としております。私は創薬事業のバイオメディカル部に所属しており、この部署内には主に抗体医薬品を開発するグループと、プロテオーム解析サービスを行うアプロサイエンスグループがあります。

弊社はバイオベンチャーとして、設立した当初から創薬に取り組むというビジョンがありましたが、創薬事業だけでは資金的に厳しくなるため、機能性食品などを手がけて、そこで得た資金を創薬研究に投資するという形で進めてきました。創薬事業のビジネスモデルとしては、大学の先生が研究されている治療薬の候補になるシーズを共同研究し、開発した医薬品の知財を大手製薬企業へライセンスアウトする形です。収益源はライセンス収入やロイヤリティ収入になるわけですが、収益化されるのは共同研究の開始から早くても数年後ですし、ライセンスアウト後から実際に医薬品として上市されるまでのハードルも高いことから、極めてリスクが高い事業です。弊社としては、一つひとつの開発プロジェクトの成功確率を高め、価値を高めることに取り組んでいます。

── アカデミアにある創薬シーズを見つけるために、どのような働きかけをされているのでしょうか。

展示会や学会に出展・発表されている大学にアプローチしています。また、大学に設置されている産学連携の部署に直接問い合わせるなど、かなり地道な活動を行っています。弊社は、創薬ベンチャーとしてはまだ知名度が低いため、私たち自身が展示会や学会にブースを出展したりすることで、弊社の技術のブランディングも行っております。

ニワトリ由来の抗体取得技術と安定した資金力という強み

── アカデミアにいる研究者へアピールできるポイントはどんなところでしょうか。

現在、上市されている抗体医薬品のほとんどがマウス由来ですが、弊社にはニワトリに免疫する独自の抗体作製技術「ALAgene® technology」があり、マウスでは作製困難な抗体の取得や抗体のバリエーションを広げたいとお考えの先生方にはぜひ注目していただきたいと考えています。2021年にはニワトリ由来抗体の第1号として、田辺三菱製薬株式会社様にライセンスアウトしました。ニワトリ由来の抗体を取得できるのは世界でも数社ですので、革新的な抗体の作製・開発を目指しておられる研究者様は、ぜひ弊社との共同研究をご検討いただきたいと思います。

また、弊社にはコンピューター設計により、抗体をヒト化する技術もあります。マウス由来の抗体をすでに取得されている場合は、そのヒト化から共同研究を進めることもできます。

── 共同研究を行う上での体制についてはどうでしょうか。

弊社の強みは2点あると考えております。1点目はスピード感です。やはり創薬は世界との競争なので、プロジェクトを進めるスピードが重要になります。日本の大手企業では意思決定に時間がかかることがウィークポイントになりがちですが、弊社は上場企業としてガバナンスを保ちながら、迅速な意思決定を行い、事業を進めております。もう1点は資金力です。創薬事業はハイリスクな事業ですから、一般にベンチャー企業は数件のプロジェクトを進めるので資金的に精一杯となり、仮に治療薬として有力な候補があっても資金調達がうまくいかなければ頓挫してしまいます。弊社は、プライム上場企業としての強固な財務基盤のもとで、数多くのプロジェクトを進めることができます。

アカデミアにあるシーズを社会実装するというミッション

── 資金調達の難しさが日本のバイオベンチャーが伸び悩む大きな要因であると言われています。

日本のバイオベンチャーが世界に後れを取りがちなのは、投資環境の影響が大きいと思います。米国ではバイオベンチャーを取り巻くエコシステムが確立されていますが、日本ではまだまだバイオベンチャーに投資される規模は小さい。一方、アカデミア側は、創薬シーズとなる特許を取得しても、その後の開発を進めるためには企業との連携が必須で、特許取得後に企業と連携しないと特許維持することも難しいという話も聞きます。この点において、バイオベンチャーにはアカデミアと製薬企業の橋渡しという大切な役割があり、その先の社会実装へと繋げることは弊社としても果たすべき社会的使命だと考えています。

持続可能な創薬研究を目指して

── バイオメディカル事業のもう一つの柱として、アプロサイエンスグループがジョインしてから1年半ですが、シナジーを実感されるような場面はありますか。

アプロサイエンスグループでは、ヒトの血液などの分析サービスも行っておりますので、創薬事業の臨床研究におけるバイオマーカーとして活用できる点でシナジーがあります。また、プロテオーム解析サービスはお客様から検体を預かり、納期の中で結果を出すというシビアさがありますから、実験に対する向き合い方や緊張感が創薬事業のメンバーに伝わり、良い影響を与えていると思います。

── 今後、バイオメディカル事業はどのような方向性を目指しておられるのでしょうか。

弊社は設立25年目の2022年からを第二創業期と銘打って、26年に売上高1000億を目指す「1Kプロジェクト」に取り組んでいます。既存のやり方の延長では成し遂げられませんから、組織のあり方も含めて創業の頃の気持ちで新しいことに取り組んでいこうという意味を込めています。創薬研究は1Kプロジェクトを達成した後も持続的に企業として成長していくための事業として位置づけています。現在のところはライセンスアウト実績がまだ少ないので、とにかく実績を積み重ねていかなければならないと考えています。そのためには将来への種まきをしながら芽を育てていく継続した取り組みが不可欠です。目先の案件をライセンスアウトすればいいというのではなく、若い社員が取り組み続けて10年後、さらに次の世代へと渡していけるようなサステナビリティを目指した体制作りに着手しています。今の20代30代の若手社員が10年先に夢を持てる会社にしたいです。

── 創薬シーズを持つアカデミアの研究者に向けてメッセージをお願いします。

近年はアカデミア発ベンチャーも増えましたが、ビジネス面で苦労する会社が多いと聞きます。やはり研究者と経営のプロとの役割分担は必要ではないかと思いますし、日本のバイオベンチャーには経営面の人材が足りていないのが現状ですので、ビジネス面をお任せいただける弊社とのコラボレーションを検討していただければと思います。すでに基本特許をお持ちの方であれば、弊社で抗体を取り、それに対する物質特許を共同で出願させていただくことを基本形とし、様々な形でパートナーリングさせていただきます。弊社は、共同研究させていただく先生との信頼関係を最も重視して、プロジェクトを進めてまいりたいと考えております。

(取材/文・坂元 希美)

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