Olink Target 96 Inflammation: 自己免疫疾患研究における実施例(リウマチ)1

ATRPred:関節リウマチ患者における抗TNF療法の治療反応を予測するツール

関節リウマチは、再発性の高い関節痛、炎症を特徴とする慢性の自己免疫疾患である。関節リウマチの治療には、非ステロイド性抗炎症薬と疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)が使用されており、その中でもDMARDについては抗TNF療法が一般的である。抗TNF療法は患者の重症度、進行度等に基づいて処方されるかどうかが決定されるが、3人に1人は抗TNF療法に反応しないことが知られている。また、治療効果が得られるかどうかを予測する指標が無く、実際の治療方針は臨床医の経験に基づくことが多い。これらの欠点から、抗TNF療法に反応しない患者では関節損傷や障害のリスクを増加させてしまう。したがって、臨床的にも、経済的にも、抗TNF療法への反応の可能性を判断しうる、より個別化された予測モデルが求められている。

そこで筆者らは、抗TNF療法中の関節リウマチ患者の血漿を採取し、4つのOlink Target 96パネル(Inflammation、CardiovascularⅡ/Ⅲ、Immune Response)による分析を行った。その後、6か月後に患者を治療反応群と非反応群にグループ分けし、機械学習を適応することで、治療反応性を予測するモデルの開発を目指した。

6か月後の疾患活動性スコア(DAS)に基づき、関節リウマチ患者を治療反応群60名と治療非反応群29名に群分けすることができた。これに機械学習を適応したところ、治療反応と有意に関連する17個のタンパク質がフィルタリングされた(KRT19、HAOX1/HAO1、CXCL1、RARRES2、FCRL6、REN、IL13、SPON1、MMP-1/MMP1、ARNT、TNFSF13B、PRKCQ、TRAIL-R2/TNFRSF10B、hOSCAR/OSCAR、MCP-2/CCL8、DPP10、GDNF)。また、テストセットに対する機械学習の結果から、81%の精度、75%の感度、86%の特異度で治療反応性を予測することが明らかとなった。

以上の結果から、筆者らは抗TNF療法の反応性を予測しうる分類器「抗TNF治療反応予測因子(ATRPred)」を開発した。これは、より効果的な抗TNF療法の治療効果を得ることに役立つほか、非反応性の患者の治療方針を決定しうる材料となりうる。なお、ATRPredはRベースのオープンソースとして、GitHubに公開されている。

Prasad B, McGeough C, Eakin A, et al. ATRPred: A machine learning based tool for clinical decision making of anti-TNF treatment in rheumatoid arthritis patients. (2022) PLoS Computational Biology,
DOI: 10.1371/journal.pcbi.1010204

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